父と娘のチョコレート戦記

2020/02/11(火)22:00
いま日本で空前の「チョコレートブーム」が起きている。カカオに含まれるポリフェノールなどの健康効果が見直されているためだ。高血圧や動脈硬化などの予防にも効果が期待され、高カカオのチョコレートは中高年の間でも人気が高まっている。
このチョコレートで人生のどん底から再起をかけようとする親子がいた。自己破産に追い込まれ、会社も自宅も失った老舗菓子メーカーの創業家だ。父はベトナム、娘はメキシコへ飛び、独自開発のチョコレートで復活を誓う。一方、兵庫県で360年続く和菓子店の娘は、父しか作れない秘伝のあんこをチョコレートと融合させ、客足が減りつつある老舗に新たな息吹を吹き込もうとしていた。父と娘の溶けるほど熱い舞台裏に密着する。

■人生転落の有名菓子メーカー創業家…プレハブ小屋から再起を誓う
福岡県飯塚市の住宅街に「カカオ研究所」という小さなチョコレート店がある。車輪付きのプレハブ小屋だが、海外のチョコレートコンテストで受賞し、県外からも客が訪れる注目の店だ。経営するのは中野利美さん(72)と富美子さん(65)、娘の由香理さん(39)の3人。
実はこの一家、福岡では有名な菓子店、さかえ屋の創業家。昭和24年創業の老舗で、かつては年商90億円を誇る有名企業だった。しかし、借金が数十億円に膨れ上がり、2012年には3億円の粉飾決算が発覚。創業家一族は退陣に追い込まれた。父は自己破産、自宅は競売にかけられ、一家はすべてを失った。
「もうお菓子の世界では生きられない。しかし、このままでは終われない…」
 そんなある日、親子は東京の小さな店で飲んだチョコレートドリンクに衝撃を受ける。カカオ豆から一貫生産されたチョコレートの奥深さに魅せられ、再び菓子の世界に舞い戻る決意をする。それは栄養価の優れた“高カカオ”のチョコレート。バレンタインなどのイベントだけでなく、日常でも食べてもらいたいと考えたのだ。
父の利美さんは、1年のほとんどをベトナムで過ごし、カカオ農園で汗を流す生活に。一方、娘の由香理さんはメキシコに渡り、チョコレートを使った伝統的な料理用ソース「モレソース」の開発に着手した。父の育てたカカオ豆を使って、娘がモレソースを作り、業務用としてレストランに販売したり、瓶詰めにして市販したりしようというのだ。チョコレートで人生のどん底から這い上がろうとする親子の奮闘の行方は…

■斜陽の老舗和菓子店…「あんこ×チョコ」で新風を吹き込む13代目
 兵庫県の老舗和菓子店「大三萬年堂」。創業360年を誇る名門だが、近年は洋菓子人気や少子高齢化の影響などで客足が減少している。店の存亡をかけて立ち上がったのが、13代目の安原伶香さん(30)。和菓子に“かわいい”要素を取り入れた新感覚スイーツで新風を吹き込もうとしていた。去年6月には、和洋折衷のオリジナルスイーツを販売する「大三萬年堂HANARE」を東京にオープン。新店舗を足掛かりに、初めてバレンタイン商戦に打って出る決断をする。大三萬年堂に代々伝わる門外不出のあんこと、チョコレートを組み合わせた「粒あんガトーショコラ」で勝負に打って出る考えだ。しかし、伶香さんにはチョコレートの知識も、あんこ製造の技術もない。しかも、チョコには甘さや苦さが数百種類あり、和菓子に合うチョコを選び出すのは至難の業。勢いを失いかけている老舗を生まれ変わらせることができるのか…
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