シリーズ“外食王”第9弾「居酒屋 新時代!」

2020/02/25(火)22:00
人材不足、働き方改革などの影響で逆風が吹く「外食業界」で、特に苦戦しているのが「居酒屋」業態だ。チェーン店の増加で店は飽和状態。さらには若者を中心とした飲み会離れなども追い打ちをかけている。そんな中、新しい時代にふさわしい新しい居酒屋をつくろうという動きが加速。人気の居酒屋チェーンの仕掛け人が独立し、いままでのチェーン店の逆を行く“常識破りの居酒屋”を次々と仕掛けていた。客も、働く人も、そして店を取り巻くすべての人を幸せにしようという、“新時代の居酒屋”像を探る。

◎客を飽きさせない!話題の居酒屋が続々誕生
代官山や目黒といったおしゃれな街で今、話題となっている居酒屋がある。その名も『茶割』。いまブームとなっている「お茶割り」のお酒だ。そのこだわりはユニーク。緑茶やほうじ茶、紅茶など10種類のお茶と、焼酎や泡盛、ウイスキーなど10種類の酒を組み合わせて100種類の酒が楽しめる。さらに鳥の唐揚げも、部位や味の組み合わせで100種類から選べるなど、独自の仕組みが客を飽きさせない。「ここにしかない」、さらに「何度も来たくなる」仕掛けが必要になっているのだ。
大手チェーン店にも変革の波が・・・。1月に開店した居酒屋「ゼロ軒めロボ酒場」でビールを注いだり、サワーを作るのはロボット。しかもAIで会話をしながらドリンクを作る。これを仕掛けるのが昭和13年創業の居酒屋チェーン「養老乃瀧」グループ。期間限定の取り組みであるが、話題性だけでなく、人手不足を解消する一手としても注目しているという。新勢力も老舗チェーン店も、新しい時代に合わせた変革に取り組んでいた。

◎人気チェーン店の元・仕掛け人が作る…“今までにない居酒屋”とは…
サラリーマンの聖地・新橋に、一昨年9月にオープンし、飲食業界で注目を集めている店がある。店の名は「烏森百薬(からすもりひゃくやく)」。1階はカウンターが中心で、2階のテーブル席は4組。常に1ヵ月先まで予約でいっぱいだという。この店の最大の魅力は、「全国各地の有名店の名物料理」が味わえること。熊本で大評判のから揚げや、北海道各地で大人気となっている名物「餃子」を始め、卵焼き、もつ煮込みなど。店で提供される30品の内、25品は全国各地で話題を呼んでいる絶品料理ばかりだ。店のコンセプトは“食のセレクトショップ”。「多くの店は、自店で作った自慢の料理をお客にすすめるが、それは、勝手な固定概念。料理を追求しているお店の方が、お客さんの喜びにつながる」そう語るのは、ミナデインの大久保伸隆社長(36歳)。大久保さんは「塚田農場」などの居酒屋チェーンを運営する会社「エー・ピーカンパニー」でわずか30歳にして副社長まで上り詰めた、業界で“カリスマ”と呼ばれた逸材。しかし2年前に退社し今の店をオープンさせた。大久保さんは新しい挑戦を始めた理由を次のように語る。「どこでも同じ料理が味わえるチェーン店の良さも学んだが、その一方で、どこに行っても駅前には同じ看板の飲食店ばかりで街の顔が消えている。そうした状況を変えたい。」
そんな大久保さんにはもう一つ狙いがある。それは多くの飲食店が抱える「人材不足」の克服。人気商品の「唐揚げ」は、仕入れ先が味も粉もつけて冷凍して送るので、店では揚げるだけなので仕込みは一切なし。こうした仕組みにより、ピーク時でも厨房の従業員数はたった2人。チェーン店の人数に比べ半分だ。「働くスタッフには“心の余白”が必要。調理や料理を運ぶ負担が少ない分、お客と会話をする時間が増える。それがスタッフのモチベーションアップにもつながるし、結果として“サービス力向上”につながっている。」

◎その土地でしかできない その土地に愛される店を作れ
大久保さんが新橋以外でも仕掛ける新しい店が千葉・佐倉市ユーカリが丘にある。店の名は、「里山トランジット」。昼間は「ファミリーレストラン」夜は「居酒屋」という“二毛作店舗”だ。この店のコンセプトは「地域の強みを生かした住民に愛される店」。地域密着をうたう店は多いが、大久保さんは地域密着に徹底的にこだわる。その仕掛けの一つが、地域住民が持ち込む野菜を使った料理。地元の農家に声をかけ、とれたての野菜を仕入れて調理加工する“持参自消”というスタイルをとっているほか、市民農園を利用している個人にも声をかけ、余ってしまったものを無料でもらえる仕組みも構築。週に2~3回、住民が店を訪れ、店頭に設置しているボックスに勝手に野菜を入れていく。無料でもらった野菜は、店で調理し客に無料で提供している。
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