新型コロナウィルスとの闘い 生き残れ!ニッポンの宿

2020/05/05(火)22:00
例年、ゴールデンウィークと言えば、家族や仲間と旅行したり、イベントに参加したりと、楽しさが溢れる時期。しかし新型コロナウィルスに怯える今年は、これまで経験したことのない“不気味な静けさ”に包まれている。中でも観光業への打撃は深刻だ。多くの宿泊施設は、今まさに“休業”から“廃業”へと追い込まれようとしている。しかし、この逆境に立ち向かう人々がいる。国内外に42施設を展開する「星野リゾート」。その中で最も早く打撃を受けたのが、北海道の「OMO7旭川」だ。地元のスタッフは、今こそ“原点回帰”と、周辺の店舗を巻き込んだ取り組みをスタートさせた。さらに「星のや東京」では、あるシミュレーションを開始。それは「ウィズコロナ」を見据えたもの。業界をリードするブランドの次なる一手とは?一方、新潟。越後湯沢駅前の「HATAGO井仙」と南魚沼の「ryugon」、ふたつの宿を経営する井口智裕さん。従業員たちに「みんなの雇用は守る!」と宣言した先に見据えるのは、コロナ収束後だ。客のいない今こそ、“地域の魅力”を伝える新たな手法を考え出し、ワンランク上のおもてなしを準備しようというのだ。
 “ニッポンの宿”を守るため奮闘する人々の姿を追う。

■「若女将の決断は…」松井本館・別館(京都)
 京都市の中心街に位置する旅館「松井本館・別館」。年間6万5000人もの修学旅行生を迎えてきたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、春シーズン(4~7月)はほぼキャンセルに。宿を切り盛りするのは4代目・若女将の松井もも加さん(33)。売り上げの落ち込みをなんとか食い止めようと宅配弁当を始めるが、焼け石に水。ついに3月末、別館を休館することに。4月からは本館に宿泊客を集約、従業員を順番に休ませながら、営業を続ける決断をした。しかし、そのわずか1週間後、政府が緊急事態宣言を発令。さらなる苦境が…。
 
■「原点回帰」「ウィズコロナ」星野リゾート(北海道・東京)
 北海道・旭川で星野リゾートが運営する「OMO7旭川」。周辺にある旭山動物園、ご当地グルメの店から、地元民しか知らないディープなスポットまで、“街全体をリゾート”として提案する都市観光ホテルだ。売りは、旭川を知り尽くしたスタッフが「ご近所専隊OMOレンジャー」として周辺を案内する、ユニークなツアー。冬には、ウィンタースポーツ目当ての客が押し寄せ、全237部屋が満室になるほどの人気ぶりだった。
 しかし、新型コロナウィルスの影響で、今年3月の売り上げは、昨年の2割にも満たない。「OMOレンジャー」のツアーで案内しているご近所の商店街にも人影は無く、飲食店も大打撃。30年間居酒屋を営んできた店主は「厳しいです。政策金融公庫から1000万円借りることも考えている」と嘆く。
そんな中、「今こそ、我々で何かできないか…」と立ち上がった「OMOレンジャー」たち。その中心に立つのは、地元出身の室橋明子さん(38歳)。室橋さんが改めて立ち返ったのは、「ご近所に魅力があってこそのホテル」というOMOの“原点”だ。星野代表も駆けつけ始まった、ご近所との関係をより深め、ともに苦境を乗り越えていくための取り組みとは?
 そして、星野リゾートは、その先へも動き始めていた。4月、東京にある本社の会議室には、間隔を取りながら座る幹部たちの姿があった。代表の星野さんが呼びかけると、モニター上に揃った各施設の総支配人たちが、それぞれの状況を説明していく。星野さんが見据えるのは、1~2ヵ月先。事態が今より収束に近づいていた場合にすぐ動き出せるよう、あるプランの準備を進めていたのだ。それは、客が安心して泊まれる「3密のない滞在」を提供するというもの。「星のや東京」で従業員によるシミュレーションが始まった。しかし、そこには様々な課題が…。

■ 「不を逆手にとり今こそ攻勢に!」はたご井仙×雪国観光圏(新潟)
 新潟の越後湯沢にある旅館「HATAGO井仙」は、雪国ならではの料理と情の厚いもてなしが評判で、例年は季節を問わず満室。ところがこの4月、一日一組という日が目立つようになっていた。「湯沢温泉は悲鳴を通り越して沈黙です。倒れる所も出てくる」。宿を経営する井口智裕さん(46歳)は嘆く。雪国3県7市町村が連携して観光をアピールする「雪国観光圏」の代表も務めてきた井口さん。実は、連携地域である南魚沼の「龍言」旅館の経営を移譲され、昨夏「ryugon」として再出発させたばかり。古民家16棟を移築した、雪国文化が詰まった宿。ここを雪国観光圏の新たな拠点に、というその矢先、コロナショックが襲った。
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