コロナに思う#18 海部陽介さん 国立科学博物館

2020/04/28(火)23:00
各界で活躍する人によるリレーメッセージ「コロナに思う」。今夜は、人類進化学者で『3万年前の航海を再現するプロジェクト』などを手がけた、国立科学博物館の海部陽介さんです。人類はウイルスに勝てるのかそのためのヒントはたくさんあるといいます。

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「戦いに勝つにはまず敵を知り、そして己を知りなさい」という孫子の教えがあります。そこでウイルスと人間の両方について考えてみました。

新型コロナウイルスはわずか3か月で地球全体に広がりました。アフリカで進化した人類が世界に広がるのに5万年かかったことを考えると、これは驚異的です。ウイルスの側からすれば、病原菌の歴史に残る大成功と言えるでしょう。

しかしウイルスは自分では動けません。誰がその成功に手を貸したかと言えば、それは私たち人間であるわけです。

人間は何万年も前から移動を繰り返して、社会を発展させてきました。新型コロナウイルスはその行動パターンにうまく乗りました。つまり私たちはウイルスに利用されているのです。

では、それぞれの弱点は何でしょう? ウイルスは全ての個体が同じように振る舞うクローン軍団です。ですから私たちは研究して、相手の行動を読み、ソーシャル・ディスタンシングや手洗いなど感染予防対策をマニュアル化できます。

一方で、ウイルスは意思を持たない機械のような存在ですから、疲れたり手加減することはありません。対する私たちは状況を理解し、行動を変える決意をし、その気持ちを持続しないと対策を徹底できません。

どうしたらそれができるのか。ヒントはたくさんあると思います。日々のニュースを見ると、最前線の現場で奮闘するたくさんの人たちがいることを知り、自分もできることをやろうと勇気づけられます。今は世界中の人々が同じ敵と戦っているので、情報を共有し、互いに学び合うこともできます。

新型コロナウイルスは人間の気持ちという弱みに付け込む非常に厄介な敵です。ですが希望があることを忘れず、やるべきことをやり続けることが明るい未来の近道であると信じています。
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