コロナに思う#27 原田マハさん

2020/05/11(月)23:00
リレーメッセージ「コロナに思う」です。今夜は、無名だった頃のゴッホを描いた「たゆたえども沈まず」などアートに関する著作の多い、小説家の原田マハさんです。フランスでロックダウンを経験したという原田さんが、ある作品を見て抱いた強い思いを語りました。

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2月28日、ロックダウンの2週間前にふと思い立ってルーブル美術館に行きました。10年前に訪れたとき、偶然見つけたルーブル最古の収蔵品6000年前のメソポタミア時代の壺、その壺に呼ばれるように見に行きました。

おおらかな形でシンプルな模様がついています。当時はアート作品や美術家などという概念はなかったでしょう。それでも、この壺をいいねと思う誰かがいて、以後6000年という気の遠くなるような時の中、この壺は守られ伝えられ、今ここで私たちの目の前にいる。

私は壺を見つめながら、この壺が今に伝わる奇跡を見て、感動が沸々と湧き上がってきました。

世界中でロックダウンが実行され、日本でも緊急事態宣言の状態が続いています。医療崩壊を避け、人命を救うために不自由な状態を続けている人が世界中に何億人と存在しています。その人々全ての心に寄り添っているのが芸術文化、アートであると思います。

どこへも出かけられない中で、私たちは音楽を聞き、画集をめくり、物語を読み、映画を楽しみ、芝居やコンサートやダンスの動画を見て、バーチャル美術館の展示を体験しています。

これら芸術文化の存在に私たちがどれほど助けられているか、想像してみてください。音楽や映画や本、アートのない生活を私たちは楽しく送ることができるでしょうか。

芸術文化は決して「不要不急」のものではなく、私たちが人間らしい感性と暮らしを維持するために、今だからこそ必要なものなのです。

活動を休止せざるを得ない芸術文化関係者は、今はじっと耐えてもう一度皆さんへ最高の芸術を届ける日が来るまで、力をためています。私たちの生命維持に必要な存在である彼ら、彼女らのために、政府が積極的な支援をすぐに行うことを期待しています。

私たち人類は何万年もの間、アートを忘れたことは一度たりともありません。アートは人間の証明であり、人間の強さの証です。このコロナ危機を乗り越えて、私たちはきっとアートを次の世代に伝えていく。そう信じています。

一緒に守り抜きましょう。
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