コロナに思う#28 小説家 真山仁氏

2020/05/12(火)23:00
リレーメッセージ「コロナに思う」。今夜は元新聞記者で、企業買収を描いた経済小説、「ハゲタカ」シリーズの作者、真山仁さんです。「現実は小説を超える」と今、実感しているといいます。

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今起きていることを小説家として考えたことがあるかと、多くの人からよく聞かれます。

小説家としてこれは絶対勝てないと思ったことが1つあるんです。多くの場合、ショッキングなことこそ小説の材料だと思っていました。でも今回のコロナは感染しても一気に突然、道端で亡くなるようなことはなくて、じわじわと知らない間に感染が広がっていくところが特徴だと思うんですが、小説だと地味なんですよね。書いても、出版社から「これは再考してください」と言われる。

でも1つだけ言えることは、ウイルスの蔓延に関してはコロナを超える作品は難しいが、ここで右往左往する人たちをちゃんとウォッチし、小説でこういう危機になるとき、なぜ我々はこれだけうろたえるかということは書かなければと今すごく思っています。

もう一つ忘れてはいけないのは、厳しく命令を出して、拘束すれば社会は回るのかと思ってしまうこともあるが、自粛だけで大惨事にならなかったということの意味を考えていかなくてはいけない。

おそらくポストコロナは政治に対して、国家権力をどうやって使うべきなのかという議論がすごくされると思うんです。中にはもっと厳しい法律を作って、戒厳令くらいできるような国になればいいと思っている人もいるかもしれないんですけど、戒厳令を持っている国より日本の現状を見ていると、日本の方が生きやすい社会をキープできていることを覚えておかなくてはいけない。

今すごく多くの人が他人のことを気にしている。「自分がこれだけ我慢しているのに、なぜあの人はあんなに勝手にやっているんだ」と非常に鬱憤をためている人も多いと思うんですけど、それはその人にとって自分の正義からするとおかしいという考え方で、「正しい」は非常に危険な発想だと私は思っています。

あなたが正しいと思ったことはあなたに取って正しいのかもしれないけど、それを人に押し付けて必要以上に相手を傷つけることになったときに、その正しさが悪になってしまうこともある。

正しさということを、何かやろうとするとき、発言するときには、本当にこれはみんなに取って正しいのかをもう1回自問自答してから行動してほしいと思っています。
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